Sensing bears in the forest 森で感じる熊の気配

  • 1. 爪痕(ツメアト)

    木の幹に刻まれた直線状の傷跡。数本の傷が平行に残るのが特徴。高さや幅で個体の大きさを推定可能。木の成長に伴い幅が広がる。
    目的:木登り、マーキングなど。
    出現時期:通年(特に繁殖期・秋の採食期)。

    熊の爪痕
  • 2. 足跡(ソクセキ)

    足跡(アシアト) 条件がよいと前後とも5本の指と爪の痕が残る。前足は丸く、後足は縦長で、かかとまで地面につく。雪や泥地で明瞭。
    出現時期:通年。

    雪の熊の足跡
  • 3. 糞(フン)

    大型で俵型。やわらかい場合にはぼたもち状となる。内容物(種子、虫の破片、繊維など)がそのまま見える。匂いは強くなく、タヌキのため糞との区別が可能。
    重要性:野外での最も信頼性の高い痕跡の一つ。 出現時期:春〜秋。季節ごとに内容が変化。

    熊の糞
  • 4. 食痕(ショッコン)

    果実の皮や芯の残り、樹皮の剥がし跡、作物のかじり跡など。植物に対する選好性が読み取れる。 周辺に踏み跡や糞が同時に見られる場合が多い。
    出現時期:夏〜秋。

    食痕
  • 5. 背こすり跡(セナカコスリアト)

    木の幹が摩耗・変色し、皮が剥がれている。付近に毛が付着することもある。高さの一定性に注目。
    目的:マーキング(視覚・嗅覚)、かゆみ取り。
    出現時期:夏〜秋。

  • 6. 臭い(ニオイ)

    獣臭・糞尿臭が強く感じられる場所がある。風下や湿度が高い時に検出しやすい。
    場所:冬眠穴周辺、背こすり痕、寝床など。
    出現時期:通年(特に繁殖期や活動密度の高い時期)。

  • 7. 音(オト)

    咳払いのような「フゴフゴ」、草を踏み分ける音、枝が折れる音など。 注意点:聞こえた場合はすぐに立ち止まり、音の方向に注意。
    出現時期:春〜秋。

  • 8. 毛(ケ)

    黒〜茶色の粗毛が背擦り跡のある木の幹や寝床、熊棚などに落ちている。光沢の有無や縮れ具合で新旧判別が可能。
    補足:毛根部はDNA分析にも利用可能。
    出現時期:通年。

  • 9. 寝床跡(ネドコアト)

    地面の草や落ち葉が円形に押し潰されている。直径は1m前後。毛が残っていることもある。
    特徴:同一個体が繰り返し使用することがある。
    出現時期:通年(特に移動途中の休息時に出現)。

  • 10. 熊棚(クマダナ)

    樹上に積まれた折れ枝の塊。果実や堅果を食べる際にできる。地面に糞や食べ残しが見つかることも。
    識別ポイント:大型の構造、同一木に複数作られる場合もある。
    出現時期:秋。

    森
  • 11. 蟻舐(アリナメ)

    地表や朽木が削られ、アリの巣が掘り返されている。木くず・土の散乱が目印。
    関連:蟻酸のにおいを好む。食痕と糞がセットで見つかることも。
    出現時期:初夏〜夏。

  • 12. 冬眠穴(トウミンケツ)

    斜面や倒木下に掘られた横穴、大径木の樹洞、岩穴など。径50〜100cm程度。内部に毛やとめ糞、踏み跡あり。
    特記事項:メスがこの中で出産。周囲の踏み跡が重要な痕跡になる。
    出現時期:12〜3月に利用。痕跡の確認は春先。

  • 13. 地掘り・かき跡

    地面が広範囲にかき乱され、石が裏返っていることもある。根や昆虫、球根を探した跡。
    観察点:複数個所が連続している例も多い。
    出現時期:春〜秋。

Photo by Sinh Futagami